2013年5月3日金曜日

ベトナムから日本の憲法改正論議に物申す!

Xin chao(・ω・)/ いけのんです

日本はGW、ベトナムは平日です。
今日は、日本の憲法記念日ということで憲法の話をしたいと思います。

仕事の中で、たまに政治や法律の話なんかもするし、大学時代は法学部だったし、これからベトナムは憲法改正に向けて動いているということで、海外にいる日本人という視点で書いてみたいと思います。

学説とか抜きでゆるーく書くので、法律知らないって人も是非!
(※参考文献とかオススメ本・論文もいっちゃん最後に追記したのでよかったら見てねー)

○ベトナムの憲法改正

ベトナムの革命家ホーチミン

ベトナムでは戦後、大きく分けて4つの憲法が使用されてきました。
今使われている憲法は1992年に制定された、ベトナム社会主義共和国憲法です。
ドイモイ憲法とも言われ、社会主義的方針を定めながらも市場経済を導入する法的基盤として制定され、2001年改正では一層の市場経済化・民主化の促進が盛り込まれました。

そして、今秋、ベトナムでは政治・経済の面からより一層の刷新を進めるために、憲法を改正しようとしています。
ベトナム政府は、人民の意見を集約しようと、今年初めから3万回におよぶ会合、シンポジウム、会議を開催してきました。ホーチミン市では人口の約半分以上が意見集約に参加しているということです。

人民からの意見集約だけでなく、ベトナム政府も、政治体制が違う日本(名古屋大学)にも憲法改正調査団を送ったりする等、政府としてできる情報収集を積極的に行っています。

このように、ベトナムでは国をあげて憲法改正が今進んでいます。(少なくともそう見えます)

○憲法改正によるガス抜き

社会主義プロパガンダ、なんて書いてあるんだろう

社会主義や共産党一党政治の否定はしてはいないものの、人権規定や対外協調文言をいれたり、社会主義という看板を国名から外し表面上民主化しているアピールをしているあたり、ゆるりと人民のガス抜きをしている感じが何とも策士だなぁと思います。

そもそも憲法は、改正の難易度から、硬性憲法軟性憲法と二つに分けられます。
硬性憲法は、通常の法律の制定と比べるとより厳格な改正手続きを備えている憲法、一方、軟性憲法は通常の法律と同じ手続きで改正できる憲法のことを言います。
歴史を遡ると、1901年にイギリスの法律家J.ブライスがオックスフォード大学での講義をもとに書いた「軟性および硬性憲法」と題する論文で、この区別を試みたのが始まりとされています。

ブライスは、硬性憲法の特徴である「安定性」について、実は硬性憲法は不安定さを含んでいるという考察をしています。

軟性憲法は、「憲法上の事態の変化や進展にしなやかに対応する」ことができ、「革命」にも耐えうることができます。しかしながら、硬性憲法は、憲法改正の手段でないとなしえないような変更を、法的はけ口から閉め出すことで、革命や市民戦争を引き起こすという恐れを指摘しています。
ブライスは、南北戦争時代の合衆国憲法の改正がもっと容易だったなら、南北戦争は回避されたかもしれないと言っています。

つまり、憲法改正は、革命的変革を合法的に遂行することと言えるのです。

ベトナム政府が意識しているか否かは定かではありませんが、ドイモイによって経済開放が行われ、国の実態と国の看板に齟齬がうまれる中、人民による"革命"という手段による変革ではなく、政府による憲法改正という手段による合法的変革を、人民を巻き込みながら遂行することで、国家的安定を維持しているベトナム政府は、とても抜け目ないのではないかと思います。

○第96条、改正手続きをどうするか?


では、日本はどうでしょうか?

ご存知の通り、日本は、戦後60年以上憲法は改正されていません。
憲法改正に躍起になっている自民党が長年政権を支配していたにもかかわらず、憲法改正できなかったのは、日本の憲法がいかに硬性憲法かということの表れでしょう。

第一次安倍政権で、安倍首相は国民投票法を定め、憲法改正に向け一歩コマを前進させました。
それを考えると、第96条の改正にスポットを当てている状況は、安倍政権なら当然なのでしょう。

個人的には、日本の政党政治に不信感があるので、96条を大きく改正することには反対です。しかしながら、先のブライスの話の通り、革命的変革の合法的遂行はあってしかるべきものかと思います。
なので、硬性憲法を維持(=法律よりは改正手続きを厳格に保つ)しつつ多少要件を緩和するのは構わないと思っています。

忘れちゃいけないのですが、日本の場合は、結局は、最終的に国民投票で決まるのですから、立法府の要件は多少緩和しても問題ないと思います。
ただ、だからこそ、国民投票の部分はしっかり規定すべきかと考えています。


○忘れてない?有効投票数と最低投票率の問題


結構忘れられてるかもしれないけど、国民投票法も結構問題ありなんですよね。

"有効投票"の過半数
→投票した人かつ白票(無記載)等の無効票を除いた過半数ということなので
 投票してない人の声は届かない。
・最低投票率規定なし
→ということは、仮に国民の半分以下=投票率49%でもOKということです。
・条文ごとではなく憲法全体一括でしか投票できない
→改正案全体にYESかNOかなので、「同性婚のように新しい概念がでてきているし憲法24条の条文もあわせて修正すべきだと思うけど、某党草案の第21条の公共の福祉を"公益および公の秩序"としているのは反対・・・。」というような個別具体的な意見を反映できません。

こちらの問題は日弁連などの資料がわかりやすいと思うので時間あるときにでも見てください。

これもまた、安倍首相が憲法改正を達成するために、ゆるゆるの条件にしてしまったわけですが、個人的には96条の話題出すなら、国民投票法の話もちゃんとしろよ、と思います。(日本のマスコミとりあげてる?)

主権が国民にあるからこそ、最終判断の部分こそ公正・厳格にすべきです。
基本的に立憲主義において、憲法は国民を縛るものではなく、国家が暴走しないようにするための歯止めと理解されています。なので、96条ないし、それに関わる法律=国民投票法は特定政党のイデオロギーではなく、国家のあるべき姿として国民的議論に基づき制定すべきだと私は考えます。

○時代は常に変化している

ベトナムも日本も、政治体制は違えど、変化の中にいます。政治経済国際関係のようにマクロな部分から文化・個人の価値観のようにミクロな部分まで、時代によって変化するのは当たり前です。

変化に対応できない国は変化の渦に飲みこまれていきます。日本は"解釈"という方法で憲法を解釈し法律を制定することで変化に対応してきました。(例えばPKO法とか周辺事態法とかね)

それが今、憲法改正という手段に目がいくのは、果たして日本にとってベストな手段と言えるのでしょうか?


現状問題だと感じるのは、①課題の解決手段が憲法改正のみだと判断していること②そもそも課題がよくわかっていないということ、の二つだと思います。
前者は政治家、後者は国民に多いのかなと、感覚的ですが。

まずは、課題をしっかり特定し、ロジカルに解決策を導き出し、手段ごとにメリット・デメリットを判断し、選択していく必要があるのではないかと思います。

あれ、ビジネスと一緒じゃない、これ??
ということは、忙しい社会人でも、こういう示し方をすれば、選択しやすくなるのではないかなぁと個人的に感じました。

思考法や伝達法ってどんな分野でも共通して大切なことですね。

え?結局いけのんは改憲派なのか護憲派なのかよくわからんて?
意見がないわけではないけど、ここで自民党の憲法草案ディスったり個別具体的に分析書くと変なのわきそうだから、25円の生ビール飲みながら直接議論しましょう!!
というわけで、ハノイまでおこしください!!w

ではでは今日はこの辺で(^ω^)/


2013年5月8日追記

興味なかったけどちゃんと勉強したい!!って方、以下の書籍・論文を参考にしてみてください

※今回の記事を書くにあたって参考にした文献

※もっと詳しく憲法知りたいって方へオススメ入門書4冊(改訂されて新しくなってるのもありますが、大学時代読んだ本です。)
1か2を読んだ後、3か4を読むことをオススメします。

1.憲法まずはこれ!イトマコで入門(200pちょい、高校生でも読めます)
伊藤真著「伊藤真の日本一わかりやすい憲法入門」

2.いや、字は苦手だからイラスト多めの本がいいというあなたはこちら(200pちょい、高校生でも読めます)
伊藤真編集「マンガでわかる憲法入門」

3.法学部で法律を学んだ人でこの名を知らない人はいない、芦部憲法(400p超)
芦部信喜著「憲法 第五版」

4.芦部憲法はちょっと重いなぁって方は、樋口憲法を(200pちょい、高校生でも読めます)
樋口陽一著「五訂 憲法入門」

※憲法改正について論文いろいろetc
山岡規雄、北村貴著「諸外国における戦後の憲法改正」国立国会図書館,2010年
日弁連「憲法96条の発議要件緩和に反対する意見書」2013年
福井康佐「国民投票による憲法改正の諸問題」『大宮ローレビュー第6号』,2010年

時間あるときに追加していきますね。これオススメってのあれば是非教えてくださいなー(^ω^)
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